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ウソを分析していくと、ホントなのかウソなのかがわからなくなる。
その代表的なものに、"エピメニデスのパラドックス"というものがある。
エピメニデスは、ギリシャの宗教予言者であり哲学者、ついでに詩人でもある。

その彼が残したゼウスを讃え、その永遠性を詠った詩の一節に、
『クレタ人は、みんなウソつき』という言葉がある。
まさにこれが、エピメニデスの金言として残っている。

問題なのは、『クレタ人は、みんなウソつき』が「正しいか否か?」
というところ。
この言葉を分析すると、エピメニデスは、クレタ人。
その彼が、「クレタ人はウソつき」というと、彼もクレタ人だから彼もウソつきとなる。
そうすると、彼はウソを言ったことになるから、
「クレタ人は、ウソつきではなくなる。」

また、このようなパラドックスの話を挙げれば、「催眠術師がかける催眠術」というのがある。
催眠術師が、被験者に「あなたは鳥になります」や
「あなたは7歳の子供のときに戻ります」などの催眠術をかける。
そうすると被験者は、実際にそれらしい行動をとったりする。

今度は、催眠術師が被験者に向かって
「あなたは、催眠術にかからない」と催眠術をかけるとどうなるか?
当然、被験者は催眠術にかからない。
これは、「催眠術にかからない」という催眠術にかけられたから、
実際に「催眠術にかかっていない」。
だけども、それは、催眠術にかけられていることになる?
それとも、単に催眠術にかかっていない?